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スリランカの平和と人権

スリランカでは英国からの独立後,多数派のシンハラ人(人口約7割、主に仏教徒)を主体とする政府により、シンハラ語のみを公用語とする法を定めるなど、シンハラ人優遇政策が取られたことから、スリランカ北・東部を中心に居住する少数派であるタミル人(人口約2割、主にヒンドゥー教徒)との対立が続いてきました。1970年代に入り、政治的闘争に絶望したタミル人青年を中心に「タミル・イーラム解放の虎(LTTE)」などの過激派が結成され、北・東部の分離独立を求めた武装闘争が開始され、1983年から政府側との間で本格的な内戦状態となりました。2002年に停戦合意がなされたものの、2006年から再び内戦状態となり、2009年5月に、政府がLTTEを軍事制圧して、内戦が終結しました。その際にタミル住民を中心に約29万人の国内避難民(IDP)が発生し、多くの人が劣悪な環境での生活を強いられ、今でも再定住できていない人びとがいます。

国連をはじめとした国際社会からの要請を受け、ラージャパクサ大統領は、国民和解を進めるため 2010年5月に「過去の教訓・和解委員会(LLRC)」を設置し、委員会は同年同報告書を公表しました。最終報告書には内戦末期の人権問題の調査、国民和解の促進、人権状況の改善などに関する様々な勧告が含まれています。また、国連事務総長任命による専門家パネル報告(2011年)では、内戦の終局段階において、政府に戦争犯罪など人道法および人権法の違反があるとして、独立した国際的調査の即時開始などが求められました。さらに、第19会期人権理事会(2012年3月)では、これらの勧告を実施するようスリランカ政府に促しました。しかし、いずれの勧告も未だ十分実施されていません。

そのような中、IMADRの理事長である、ニマルカ・フェルナンド(弁護士)は、30年以上に渡り、スリランカの人権活動家として声を発し、地域のNGO・マイノリティと活動を共にしてきました。IMADRは98年スリランカのコロンボにアジア委員会事務所を置き、国内各地域の草の根グループと共に、スリランカの平和と人権のため、以下の活動に取り組んでいます。

 

IMADRアジア委員会の主な活動


1.紛争被害者、難民/国内避難民のための自立支援、再定住促進、開発活動
アジア委員会では、紛争被害者・難民/国内避難民(とりわけ女性)自身が声を上げ、自立できるよう、生活支援、再定住促進などの活動を行ない、ポロンナルワ、ディキリッタ、ダンブッラなどにおいて、保育所、建物、トイレなど、インフラ整備を行なってきました。なお避難民キャンプによっては、かつての紛争勃発とともにでき、20年以上存続しているところもあります。アジア委員会はそれら古いキャンプでも女性の自立支援や人権教育の活動を長年行ってきました。

VavuniyaOldCamps2010大津波で被災したスリランカのマイノリティ(ムスリム)の女性グループを組織する

内戦終結後、キャンプ内で就学前年齢にあたる子どもたちの幼児教育を支援しました。2010年には、ワウニヤのキャンプで文具や食料を配布し、マンクランやキリノッチの再定住地区に米や衣類などを配布しました。また内戦等で避難民の家族には母子世帯が多いことから、電気が通じないキャンプに住む母子家庭にソーラーランプを提供しました。さらに、LTTE の元戦闘員となっていた10代から20代の女性の社会復帰を支援するとりくみも行なっています。ワウニヤでは、女性たちが生計手段を身につけることができるよう、他団体と協力して職業訓練センターを作り、そこでミシンを使って縫製のトレーニングを行っています。さらに、親を亡くした子どもたちの支援も行なっています。

2.平和構築・人権に関する提言活動と取り組み
北部のジャフナや、東部のトリンコマリを拠点とする草の根の組織とともに、シンハラ人居住区の境界線地帯やタミル人居住地域で国内避難民が受けた暴力や避難生活についての聞き取り調査等を行なってきました。この過程でネットワークづくりにも取り組み、村々で女性グループをつくるとともに、地域や民族を超えた平和のための対話を発展させてきました。

内戦終結後は、政府による情報統制が厳しく、避難民キャンプ内のNGO の活動は実質的に禁止されたため、アジア委員会は、教会グル―プを介し避難民への支援活動を行ないました。そして、避難民キャンプの厳しい現状を聞き取り、国連でのアドボカシー活動や日本での支援要請活動を行なってきました。

Nimalka2012年3月の人権理事会では、スリランカ政府に対して過去の教訓・和解委員会(LLRC)の勧告の実施を促す決議が採択されましたが、その前後に人権活動家、とりわけニマルカ理事長に対して官製メディアによる集中的な非難扇動記事が続き、政府高官による非難等に対し、人権活動家やジャーナリストへの報復をやめるよう、ピライ国連人権高等弁務官は談話を発表しました。

内戦が終結したとはいえ、スリランカには紛争の種は未解決のまま残り、課題は山積しています。スリランカに恒久的な平和を実現するには、民族和解の政治的な決着が大前提となり、国際世論による後押しが不可欠です。IMADRは引き続き、国連での提言活動をはじめ、各国がこの問題に注視していくよう働きかけていきます。

3.スリランカ人移住労働者女性の権利保障
国外で働くスリランカ人移住労働女性の多くが様々な形の人権侵害にあっています。それらの人権侵害を記録し発信するとともに、女性たちの相談にのり、法的な支援を提供し、人権侵害に対する保障を獲得するための支援をしています。移住労働女性たちの政治レベル、意思決定機関への参加促進や組織化にも取り組んでいます。

4.カーストにもとづく差別に対する提言活動
イギリスの植民地統治の時代(1815年~)に、南インドからスリランカの中央高地に、多くのタミール人が、紅茶のプランテーション労働者として連れてこられました。その約8割はダリットで、土地も権利もなく働かされていました。その子孫の多くが、現在も土地をもたず、長時間労働の低賃金日雇い労働者として働き、不安定な低収入のため、経済的に非常に貧しい生活を強いられています。また農薬による健康被害等も放置されています。これらの問題に取り組む「人間開発組織(HDO)」(アジア委員会会員)等と連携し、調査やスリランカ政府への提言活動を行なっています。

5.先住民族ヴェッダ・コミュニティの自立支援
マヒヤンガナヤで、先住民族の人びとや、開発に向けて活動を進めている集団と連携し、酪農組合の支援などを行なってきました。

6.国際人権メカニズムの利用促進
マイノリティや被差別の当事者による国際人権メカニズムの利用促進をサポートしています。人種差別撤廃条約活用マニュアルのシンハラ語、タミル語での出版、ならびにそれを活用したトレーニングなどを行なってきました。

 

日本におけるスリランカ支援の活動


IMADRは、国連での提言活動をはじめ、スリランカの友好国である日本政府がスリランカ政府に対して人権を保護・促進させていくよう働きかけています。また、日本でスリランカに関するセミナー等を行ない、その現状と課題への理解を深め、スリランカ政府や日本政府への要請などを行なっています。

 

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