課題と活動

マイノリティ女性

マイノリティ女性

被差別部落、アイヌ民族や琉球・沖縄の人びと、そして日本の旧植民地出身者とその子孫に対する差別には長い歴史的背景があります。同時に、そうした差別に抗して、当事者を含め市民社会組織は反差別の運動を展開してきました。その一方で、それらコミュニティに属する女性たちが女性であるがゆえに受けてきた不平等や不利益な扱いについて、ほとんど関心が向けられることはありませんでした。1995年の北京女性会議をきっかけに、2001年のダーバン会議(反人種差別世界会議)の頃には、マイノリティ女性の置かれている状況を人種差別とジェンダー差別の両方から議論する気運が国際的に高まり、世界会議でIMADRも複合差別に関するワークショップを開きました。IMADRでは当事者である部落女性、アイヌ女性、在日コリアン女性、移住女性による独自の調査に協力しながら、問題の可視化と解決に向けた取り組みを進めています。

アンケート調査を実施

女性差別撤廃委員会からの勧告にもかかわらず、日本政府はマイノリティ女性の実態把握のための調査を怠ってきました。そのため、アイヌ女性、部落女性、在日コリアン女性が、「政府がやらないのなら私たちで!」と立ち上がり、2004年から2005年にかけて独自にアンケート調査を実施しました。その結果、教育、仕事、社会福祉、健康、暴力の分野における女性たちの状況が明らかになりました。三者による調査結果をもとに、関係省庁への申し入れ、女性差別撤廃委員会日本審査でのロビー活動、審査結果に基づいた提言活動などが行われてきました。

マイノリティ女性フォーラムの設立

日本政府にはマイノリティ女性に関する政策がありません。2007年9月、マイノリティ女性たちは7省庁との最初の政府交渉を行いました。その結果、2010年の男女共同参画第3次基本計画に、はじめて「アイヌ」、「同和問題など」の記述が入りましたが、具体的な政策は立てられていません。2016年の女性差別撤廃委員会日本審査ではこれまで以上に踏み込んだ勧告が出されました。こうした成果は、マイノリティ女性たちの粘り強い闘いによるもので、IMADRはコーディネーターとしてそれら取り組みに関わってきました。この経緯を背景に、2017年3月8日、マイノリティ女性フォーラムが正式に発足しました。部落解放同盟中央女性運動部、札幌アイヌ協会、アプロ・未来を創造する在日コリアン女性ネットワークそしてIMADRの4者によるフォーラムで、マイノリティ女性の存在が広く認知され、女性たちの権利が確立されることをめざして活動を進めています。
マイノリティ女性フォーラム設立の要項

マイノリティ女性の国際連帯

2000年頃より、国連人権システムにおいて、複合差別あるいは差別の交差性という概念から世界のマイノリティ女性の直面する人権課題が取り上げられるようになりました。IMADRアジア委員会に集まるインド、ネパール、スリランカの女性団体では、早くからダリット女性の状況を複合差別の視点より捉え、さまざまな闘いを展開してきました。IMADRを通したアジアと日本のマイノリティ女性間の国際的な連帯は、複合差別の視点よりさらに発展することが期待されます。