2021.04.20

ラムザイヤー論文に対する声明に多くの賛同をいただきました(4/19)

ラムザイヤー論文の問題点に関するIMADRの声明(3月8日付)に対する賛同の呼びかけに、300人以上の人びとが応えてくださいました。人権と反差別の大切さへの支持と共鳴にたいへん励まされます。賛同の呼びかけは4月いっぱいまで続けます。引き続きよろしくお願いします。 賛同の記入フォームはこちらから  

部落に関するラムザイヤー論文の問題点―人権と反差別の視点から

「人の世に熱あれ、人間に光あれ」で結ばれる水平社宣言は、99年前の1922年3月3日、全国水平社創立大会で採択された。被差別部落民が立ち上がり、自らを差別から解放するだけではなく、すべての人が差別から解放されることにより、人権尊重の社会が実現されると確信したこの宣言は、後世、さまざまに語られ、実践されてきた。未曾有の被害を出した第二次世界大戦の反省のもと、国連は1948年世界人権宣言を採択した。それを具体化した最初の国際人権文書として1965年に採択されたあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約は、その前文において、「人種に基づく障壁の存在がいかなる人間社会の理想にも反することを確信する」と述べている。その理念こそ、被差別部落民がそれより先立つ43年前に採択した水平社宣言の心髄である。

だが、その水平社が今、一人の学者の論文で貶められている。ハーバード大学教授のマーク・ラムザイヤーは、「On the Invention of Identity Politics: The Buraku Outcastes in Japan」(Review of Law and Economics, Volume 16 issue 2)(でっちあげられたアイデンティティ・ポリティックス:日本の部落アウトカースト)と題する自著において、「実際、ほとんどの部落民の祖先は、動物の皮をなめしたり、革の取引で働いたりしていない。彼らはギルドで働いてなかった。そうではなく、ほとんどの部落民の祖先は、異常に自己破壊的な貧しい農民のゆるい集合体であった」と論じている。

反差別国際運動(IMADR)はこのラムザイヤー論文の説に驚く。前近代の身分制度に由来する部落差別は、現代においても日本社会に根深く残っている。これは南アジアにおけるカーストに基づく差別と類似した形態の差別であり、職業と世系に基づく差別として国際社会のなかで明らかにされてきた。私たちは被差別部落を含む世界のこれら被差別コミュニティと連帯して、国際人権基準のもと差別撤廃を目指している。

1961年、総理府の付属機関として設置された同和対策審議会は、同和問題を解決するための施策に関する総理大臣の諮問に対して1965年に答申を出した。答申はその前文において、「同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる課題である。・・・その早急な解決こそ国の責務であり、同時に国民的課題である」と、問題解決の重要性を明らかにした。さらに「近代社会における部落差別とは、ひとくちにいえば、市民的権利、自由の侵害に他ならない」として、職業選択の自由、居住・移転の自由、そして結婚の自由などが侵害されていると示した。まさにこれは、1966年に国連が採択した市民的および政治的権利に関する国際規約により保障されている権利の侵害である。

1969年、同対審答申を受けて同和対策事業特別措置法が制定され、2002年の法失効までの33年間、特別措置法のもとさまざまな対策が講じられた。これは、人種差別撤廃条約第2条2項および市民的及び政治的権利に関する国際規約第26条が認めているように、差別をうけた者を保護し救済するために国家が行うべき特別措置や是正措置である。ラムザイヤー論文は同和対策特別措置について、「戦後間もない頃から、『被差別部落』のリーダーと暴力団が連携して、地方自治体や県庁からの資金を強奪するようになった。1969年、彼らは国からの徴収を開始した。」として、事業の正当な受益者である部落民を、偽りのアイデンティティを利用し、私利私欲にかられた「ゆすり」の戦略によって、政府の資金を引き出したかのように述べている。

国連人種差別撤廃委員会は、条約締約国である日本の政府報告書審査による総括所見(CERD C/JPN/ CO/3-6, para 19)において、同和対策事業の結果と部落問題の継続的な課題に関して次のように懸念を表明している。

委員会は、締約国が部落民に対する差別を社会的問題として認識していること、および、同和対策事業特別措置法のもとでの成果に関心をもって留意しつつも、2002 年の同法終了時に、締約国と部落組織の間で合意された条件(本条約の完全実施、人権擁護に関する法律の制定および人権教育の促進に関する法律の制定)が、現在まで実現されていないことに懸念する。委員会は、部落差別事案を専門的に取り扱う権限を有する公的機関がないことを遺憾とし、部落民やその政策を取扱いまたはそれに言及する際に締約国が用いる統一した概念がないことに留意する。さらに、委員会は、部落民とその他の人びとの間の社会経済的格差が、たとえば物理的生活環境や教育において、一部部落民にとっては狭まったにもかかわらず、雇用、婚姻、住宅および土地価格など公的生活の分野における差別が依然として残存していることを懸念をもって留意する。さらに、委員会は、部落民の状況の進展を測定する指標が存在しないことを遺憾とする。

人種差別撤廃委員会のこの所見はラムザイヤー論文における説と相容れない。ここには同論文が展開するような犯罪行為は片鱗もない。ここにあるのは、世紀にわたる差別がもたらした被害に対して国がとった措置と今もなお根強く残る差別の事実である。

同和対策事業特別措置法の失効から14年後の2016年、部落差別は日本社会の歴史的発展の過程で形づくられた身分階層構造に基づく差別であり現在も日常生活レベルで起きているという事実を鑑み「部落差別解消の推進に関する法律」を施行した。法律の実施にあたり、2017年、政府は部落差別の実態に関する調査を行い、インターネット上で流されている部落地区や部落民に関するセンシティブ情報を差別的意図をもって検索している人が少なからずいることが明らかになった。

部落差別はなくなっていない。その他の被差別マイノリティに対する差別もなくなっていない。そのようななか、マイノリティの差別の歴史を歪曲化したり否定しようとする試みがあちこちで起きている。私たちはそのような試みは認めない。私たちはすべての人がいかなる差別もうけることなく平等にすべての権利と自由を享有できるという人権の普遍性を信じ、被差別マイノリティとともに闘っていく。

2021年3月8日 反差別国際運動(IMADR)

              賛同:国際ダリット連帯ネットワーク(IDSN)               マイノリティ・ライツ・グループ・インターナショナル

声明に賛同します (2021年4月19日現在、名前は受付順で表記)

<団体 9>  

National Dalit Movement For Justice (NDMJ)

Social Awareness Society For Youth (SASY)

MINBYUN – Lawyers for a Democratic Society

ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会

NPO法人多民族共生人権教育センター

全国部落史研究会

特定活動非営利法人コリアNGOセンター

海老名解放教育研究協議会

Feminist Dalit Organization (FEDO)

<個人321筆>                        

嘉住圭介松波めぐみ文公輝
劉世傑ニキ北川 知子平野誠
Kevin De Moya川口泰司北川真児
國安真奈吉本 千世岸政彦
三宅百重池亀彩伊藤嘉章
ケイン樹里安湯浅信也鈴木 彩佳
鈴江美月佐々木崇仁川崎愛子
松本芽久美栗本敦子金澤千晶 
渡部鮎美田中一彦村上佳代
小林知世高際裕哉Yoshizumi Hisako
安部農小賀亜己中村研
井上雅文黒川早稚子角岡伸彦 
井村初美宮下萌北田暁大
金子美和後藤彩前田 拓也
矢野治世美山崎聡子アンドリュー・ワイス
池田健白石道太澤田稔
田中晶子水野浩重高橋貞恩
山田勝治篠原幸代能川元一
KAI KAJITANIAkiyoshi Tsuchiya魁生由美子
長田律子亀谷智子柴田惇朗
隠岐さや香小田川健大後藤 高志
森みずき亀井修岡田麻里
Kyoko Yamamoto中野佳子川﨑 健太郎
MASAKI OKAMOTO鈴木英生喜屋武盛也
Goto Aya増田聡川野英二
加藤伸吾Hiroshi Kataoka桑原桃音
小林律子内海陽子岡部耕典
川瀬貴也小池 隆太中井公一郎
谷村綾子石田賀奈子上田康之
内藤希金子あさみ青木智子
西川哲平河合美世子今川美香
堤圭史郎馬越 隆緒新名雅樹
杉本和子武田緑岡原正幸
瀧ヶ崎友香藤本伸樹野世阿弥
古久保さくら小原みや子宮澤早織
梁優子高吉美大場洋介
松浦弘幸有田芳生川名真理
竹口絵美谷正人杉田弘也
藤尾哲也師岡康子松下一世
上瀧浩子永野眞理田中泉
RYUICHI  KISHI本山央子李信恵
松村友里香竹内美保伊地知紀子
池田弓子伊藤広剛山口真紀
權田菜美森谷一弘北川浩太郎
中井裕子郭辰雄上原潔
武田 基一戸彰晃伊香祝子
小番伊佐夫 山本晴太菊地聡
朴沙羅内田龍史村井康利
村山哲也山本淑子熊本理抄
白川裕史尾沢孝司木村俊夫
大竹有子朴金優綺前田朗
齋藤直子Yuna Sato周藤由美子
山城彰子澤井未緩平田弘司
内田アツシ木村真希子阿久澤麻理子
雪村皐夜子吉田千恵渡辺美奈
天野光子外川正明荒川直哉
岩代麻実子西倉実季戸塚悦朗
安元雄太金子マーティン赤井郁夫
安川久子大河原康隆河合翔
岩井春子髙木靜一武田雅宏
浜口清隆荒木潤小林久公
李洪章高谷幸潮崎識衣
金一宣久遠藤竜太岡田実穂
山本眞理麻生歩松島泰勝
潮江亜紀子友永雄吾太田治美
中原美香熊本博之坂内博子
岩澤亜希白幡ちあき友永まや
牧口誠司中村一成三木幸美
牧野修也小川玲子阿南重幸
山脇和夫小川眞智子ヘルベルト ウォルフガング
塩沢克彦森岡仁武田俊輔
吉田幸弘新里健太星野智幸
足立修一森容子金仲燮
髙松恭則松岡秀紀阿部藹
白田浩一吉田勉埋橋伸夫
井桁碧甕隆博林怜
鈴木あきひろ高野麗岩元修一
猪野美佐緒豊田佳菜枝齋藤瑞穂
神成文子高田道子酒井佑輔
田村ゆかり金富子山田恵子
田場祥子山口明子江畠大
青木有加服部洋幸石川結加
カワシマユカリ竹本真司尾家康介
北場逸人高岩智江竹内美夏
平里菜北口学木村敬
古川正博阿久津光代佐藤雄哉
吉水公一横田秀明水島裕介
高橋恵平田弘司川﨑那恵
藤井寿一野島美香村上らっぱ
奈須重雄西井えりな長谷川均
野村民夫荒川明牧口誠司
髙橋定具良鈺友永健三
和田献一Annie Li (Hong Kong)Madeleine Cowper (Denmark)
Dasol Lyu (South Korea)Beena Pallical (India)Paul Divakar Namala (India)
細見義博安井功岡田祐輝
中田理惠子瀧大知森山沾一
藤本篤哉馬場悠輝寺木伸明
渡辺俊雄朝治武中澤淳子
組坂澄義西田みちかず村田望
友永健吾大槻伸城濱崎宏之
上野大輔上瀧晴子市川稔道
鳥山洋大井真基子辻本義輝
小川信行小川誠子小川 昇
柴田なつき石部 純子内山隆
渡名喜守太野村博城野俊行
井上真澄たかやなぎひろこ岡山文人
瀬川均安西玲子沼田博之
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