2018.10.1

国連人権理事会39会期報告(2018年9月)

インド、スリランカ、日本のマイノリティの人権と人種差別の問題について働きかけました

 反差別国際運動(IMADR)は9月10日から28日にわたって開催された国連人権理事会39会期において、以下の活動を通して国際社会への働きかけを行いました。これらの活動は皆様からの寄付と会費によって支えられています。ぜひ寄付または会員としてのご支援をご検討ください。

口頭声明の発表

  • 「インドのダリットの水と衛生に関する人権」(9月10日)

要約: 安全な飲料水と衛生に対する人権に関する国連特別報告者のインド公式訪問報告書を歓迎しつつ、水と衛生へのアクセスにおいてダリットが暴力と差別に晒されていることを強調しました。特にダリット女性は安全に水と衛生にアクセスできないことと複合差別によって性暴力の標的となりやすい上に、IMADRと他団体との共催による人権理事会38会期でのインドにおけるダリット女性に関する暴力についてのサイドイベントで加害者の不処罰が蔓延していることを報告したことを指摘しました。また、ダリットに強いられた手作業による糞尿処理(マニュアル・スカベンジング)が法律で禁止されたにもかかわらず未だ無くなっていないことを懸念しました。その上で、特別報告者の勧告の実施においてインド政府がカースト差別の禁止を中心に据えることを要求しました。この声明はマイノリティ・ライツ・グループと反奴隷制インターナショナルとの共同声明で、国際ダリット連帯ネットワークの賛同を受けています。声明はこちら(英文)

  • 「政治における人種主義ヘイトスピーチとスリランカにおける移行期の正義」(9月11日)

要約:新たに任命されたミシェル・バシェレー高等弁務官の初めての人権理事会でのスピーチを歓迎しつつ、世界において移民、先住民族やマイノリティ、人種差別と闘う人権擁護者に対し「国家の安全と価値への脅威」を理由にして政治家や公人がヘイトスピーチを扇動していることに警鐘を鳴らしました。バシェレー高等弁務官が人物や国に限らず政治家によるヘイトスピーチを非難することを強く求めました。また、9月に発表されたスリランカの失踪者委員会の中間報告を歓迎する一方、国内の移行期の正義の取り組みの進展が遅いことを懸念しました。和解、アカウンタビリティ、人権へのコミットメントを実現するためにスリランカ政府が行動計画を作成することを求めました。声明はこちら(英文)

  • 「スリランカにおける恣意的拘禁」(9月12日)

要約:恣意的拘禁に関する国連作業部会によるスリランカ公式訪問報告書と勧告を歓迎しつつ、スリランカの刑事司法において人種差別が根強く残っていることに懸念を示しました。特にテロリズム防止法の濫用によってタミル人に対する恣意的逮捕や拘禁、拷問や嫌がらせといった人権侵害について多数の報告がされていることを指摘し、これらの人権侵害の加害者を速やかに調査訴追することを求めました。また、8月に大統領が麻薬犯罪に関して死刑のモラトリアムを撤回することを示唆したことを懸念しました。声明はこちら(英文)

  • 「ミャンマーとインドのマイノリティに対する人権侵害」(9月18日)

要約:ミャンマー軍とその他の治安部隊によるジェノサイド、人道に対する犯罪、戦争犯罪の疑いを明らかにした国際事実調査団の報告書を歓迎し、すべての関係者が勧告の実施のために協力することを求めました。また、調査団の勧告と一致しない措置を取ることのないよう各国に要求しました。また、ダリットやマイノリティの人権のために活動する5人のインドの人権擁護者が8月に逮捕されたことを懸念し、市民社会やマイノリティ、人権擁護者を委縮させるこのような抑圧的な措置を取ることを止めると共に、宗教原理主義者によるマイノリティへの攻撃に対して効果的な対応を取ることをインド政府に求めました。声明はこちら(英文)

  • 「人種差別と闘う人権擁護者と国連」(9月25日)

要約:人種差別と闘う人権擁護者、特に先住民族、マイノリティ、移民のコミュニティ出身者がインターネット上を含めて報復や嫌がらせにあっている事に対し十分な救済措置が取られていないことに懸念を示しました。今年の国連人種差別撤廃委員会(CERD)の審査に参加したスウェーデンと香港、そして日本の人権擁護者が審査の後にインターネット上でヘイトスピーチを受けていることを報告し、スウェーデン政府以外の政府が何ら対応を取っていないことを憂慮しました。この上で、ダーバン宣言・行動計画の実現のために人権理事会がこの問題に対し具体的措置を取るよう呼びかけました。声明はこちら(英文)

また、恣意的拘禁に関する国連作業部会によるスリランカ公式訪問報告書に対し、書面声明「スリランカにおける恣意的拘禁」を提出しました。

 

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