国連人権理事会で沖縄の表現の自由を議論

ジュネーブ便り

 

国連人権理事会で沖縄の表現の自由を議論

小松 泰介(こまつたいすけ)

IMADR事務局次長 ジュネーブ事務所

 

6月16日、国連人権理事会35会期において「日本、沖縄の表現の自由」と題したサイドイベントを開催した。このイベントはIMADRと沖縄国際人権法研究会、フランシスカンズ・インターナショナルが準備を進め、アムネスティ・インターナショナルの協賛を受けたものである。アムネスティのジェーン・コナーズさんの進行のもと、沖縄から山城博治さん、金高望弁護士、沖縄タイムスの阿部岳記者、そして意見および表現の自由に関する国連特別報告者であるデビット・ケイさんがパネリストとして発言した。以下、イベントの要約を紹介する。

金高弁護士は、沖縄での抗議活動は非暴力で行われており、座り込みも緊急車両の通行を阻害しないよう配慮していること、また沖縄の人びとは過重な基地負担によって差別されていると感じていることから、表現の自由の一環として抗議活動は尊重されるべきと指摘した。警察官や防衛局職員による抗議のビデオ撮影、特にキャンプ・シュワブのゲートに設置された監視カメラによる抗議参加者の録画を非難した。以前に国連拷問禁止委員会で「中世」と呼ばれた日本の刑事司法下においても、手紙のやり取りもできなかった山城さんの長期拘留は異常であり、このような過酷な取り扱いによって委縮効果が広まる懸念を指摘した。最後に、6月15日に成立した共謀罪が表現の自由やプライバシーの権利を制限する可能性について警鐘を鳴らした。

次に山城さんが自身の体験を語った。沖縄に軍事基地が集中する歴史的背景を説明した後、基地は環境破壊、騒音公害、性暴力、殺人や事故の温床であり、経済発展の最大の阻害要因となっている。自身の拘留について、検察から自白と抗議行動から離れるよう迫られたこと、そして弁護士との意思疎通も難しく、初公判の準備をする機会が十分に与えられなかったことに対する強い憤りを語った。また、末期の悪性リンパ腫の闘病中にもかかわらず主治医の診察は受けられず、虫歯になった時には治療しないで「抜くだけだ」と言われたなど、拘留中の過酷な処遇について話した。拘置所では夜に照明の光量が多少落ちるだけで、時計も無いために時間の感覚が奪われ辛い思いをしたそうである。国内外から送られた500通を超える応援の手紙は渡されず、釈放時に初めて受けとった時はとても驚いたそうである。最後に山城さんは拘留中に声を上げたすべての人に対し感謝を述べ、日本政府が表現の自由、報道の自由、そして集会結社の自由を尊重するよう求めた。

阿部記者は新基地建設問題に関して、抗議に対する警察側の暴力、環境破壊、抗議参加者の監視リスト問題などを沖縄メディアが報道してきたことにより、沖縄タイムスと琉球新報はしばしば政府高官からの攻撃の対象になっていることを伝えた。また、2015年には女性カメラマンに海上保安官が馬乗りになったり、昨年には沖縄2紙の記者が高江で15分間拘束されたりと、物理的な制限があることについて写真を見せながら話した。そして、もし今後日本でジャーナリストが逮捕されることがあれば、それは本土メディアから分断され、すでに報道の自由が脅かされている沖縄で起こるのではないかと危機感を伝えた。

ケイ特別報告者は自身の公式訪問報告書について、日本において抗議活動は概して可能であるが、沖縄の状況は異なると指摘した。外国政府と安全保障問題が関わり、それらによって沖縄の人びとに対する多大な影響があることから、活発なデモが存在することは自然であると語った。抗議参加者や山城さんに対する措置について、それらが相応なものであるのかという視点が重要であることを指摘した。山城さんの長期拘留およびその間の処遇は不相応に過度なものであり、それによって抗議運動に委縮効果をもたらすことを懸念した。特別報告者はすべての政府は抗議活動の自由を保障する責任があると強調し、関係者が自身の報告書を今一度読むよう呼びかけた。