ダリット女性と複合差別

ガイダンス・ツールは世系を共有するコミュニティの女性たちが直面する、世系とジェンダーに基づく差別の交差を重大な問題として位置付けている。IMADRのメンバーであるTNDWM(インド、タミールナドゥ・ダリット女性運動)やFEDO(ネパール、フェミニストダリット協会)のように、ダリット女性たちはこの複合差別について声をあげ、女性たちのエンパワメントのために長年活動している。ダリット女性が直面する複合差別の現状について、国際ダリット連帯ネットワーク(IDSN、本部:デンマーク)のレポート「闘え ダリット女性!」の一部を以下に紹介する。(編集)

闘え ダリット女性!

国際ダリット連帯ネットワーク

ダリット+女性=複合差別

「不可触」カーストに生まれたダリット女性は、ダリットとして差別されるだけではない。女性は男性の所有物とみなされ、常に非は女性にあるとする家父長的社会のわなにはめられている。女性として、そしてダリットとして受ける差別は、彼女たちをかっこうの暴力の餌食にし、生活のすべての空間において彼女たちから選択と自由の権利を奪っている。

然るべき手続きをとることも許されない女性たちは、守られるべきはずの司法制度からの支援もないまま、彼女たちにレイプ、強奪、詐欺、暴力などを働いた男たちを相手に闘わねばならない。警察は事件の届けを受理せず、裁判所は加害者に有罪判決を出さず、それに対して異議を申し立てたら逆に女性たちを強迫する。

これがダリット女性の現実である。日々、ダリット女性たちは自分たちの権利のために闘っている。女性たちは、世界に向けて、自分たちの代わりに、封殺されたら声を挙げ、妨害されたら行動を起こし、人権と法の支配を要求するよう呼びかけている。

レイプ、殴打、暴行

何世紀にもわたり、ダリット女性は暴力とレイプの主要な標的にされてきた。女性たちはまた、同じ村の住民がカーストの一線を超え、教育や仕事など生活の改善を求めたとき、支配カーストからの仕返しの矛先になってきた。たとえば、裸にして村の中をひきずりまわし、殴る蹴るの暴力、レイプ、家屋・家財の破壊、あるいは焼き討ちなどの形をとる。マイノリティ・ライツ・グループ(MRG)の調査によれば、ダリット女性に対する残虐行為の70%は、女性たちが権利を主張し、カーストやジェンダーの規範に挑戦したことが原因となっていた。

政治的影響力の使用を試みれば、暴力的な報復や経済的制裁にしばしばあう。ダリット女性が議員になろうとすれば、力づくで黙らされたり、あざ笑われたりする。

パキスタンでは、ダリットの少女は誘拐、強制的改宗、強制的結婚などに直面している。パキスタンにおいて宗教的マイノリティであるダリット女性は、処罰の方法としてレイプや拷問などの暴力を経験している。これら犯罪はほぼすべて、不処罰のまま闇に葬られている。

否定される正義

加害者が支配カーストのメンバーの場合、被害者のダリット女性は非常に制限された裁判へのアクセスと横行する不処罰に苦しむ。そのため、ダリット女性はレイプやその他の犯罪のかっこうの餌食にされる。インドの調査では、ダリット女性に対するレイプ事件で犯人が有罪判決を受ける率はわずか2%で、インド全体のレイプ事件有罪率の25%とは比較にならないほど低い。同様のことは、カースト制度が存在するネパール、バングラデシュそしてパキスタンにもみられる。

たとえダリット女性の届け出を警察が受理しても、裁判所に蔓延するカーストとジェンダーに基づく偏見がもう一つの高い障壁として待ち受けている。司法制度のなかに深く根を下ろす差別的なマインドセット(物の見方)は、なぜダリット女性たちが恒常的に正義を否定されるのかという問いへの一つの重要な答えとなる。

現代的奴隷と売春

ダリット女性はしばしば現代的奴隷のような条件下で働いており、奴隷労働や売春のための人身取引の対象にされる。南アジア全体を通して、女性たちはレンガ作り、縫製工場、農業などで債務奴隷として使われている。手作業による糞尿処理という非人間的な仕事に就いている人の98%はダリット女性である。バングラデシュでは、ダリット女性は紅茶農園の債務労働者として働いている。インドでは、ダリット女性は「デバダシ」という実質的な売春婦としてヒンドゥー寺院に提供されている。ネパールでは出身カーストの地位ゆえに、売春婦として生まれてくる女性たちがいる。

ウォーク・フリー財団の2013年世界奴隷指標において、最下位にある5カ国のうち、4カ国にカースト制度が存在している。地球上にいるすべての現代的奴隷のうち、50%はインドに集中している。指標は、インドにおける現代的奴隷の広がりに影響を及ぼしている主要な要因に、カースト制度と部族制度があるとし、そのなかでも女性と子どもが最も対象にされやすいと分析している。

NGOのアンチ・スレーバリー・インターナショナル(反奴隷国際)は、債務奴隷の大半(80%)は「不可触」あるいは先住民とされているコミュニティの出身者であると推定している。現代的形態の奴隷に関する国連特別報告者は、国連に提出した文書のなかでILOの調査を取りあげ、アジア諸国における強制労働とカースト差別の間の明確なつながりを指摘した。

教育と基本的公共サービスの否定

ユニセフとヒューマンライツ・ウォッチの報告によれば、ダリットの女子生徒の中途退学の割合は、全国平均と比べて驚くほど高い。報告書はインドの学校における差別と隔離がダリットの少女を教育から締め出し、児童労働と奴隷に追い込んでいると述べている。国連人種差別に関する特別報告者は、教育に関するテーマ別報告書で、次の事実を驚きをもって述べている。「学校でダリットの子どもたちが直面する構造的な差別と虐待の形態はとても不名誉なものである。そのため、しばしば子どもたちは学校をやめざるをえない。」

医療、水、衛生およびその他の基本的な公共サービスの提供においても、カーストとジェンダーの差別はダリット女性にとって、その利用において大きな妨害物となっている。差別によるこの問題については、さまざまな国連機関、国際人権NGO、あるいは開発NGOにより調査され報告されてきた。

これら組織はまた、ダリット女性にとって土地と財産の権利に関する問題も深刻であると報じてきた。女性に対する暴力の国連特別報告者が注目したように、ダリット女性たちは支配カーストにより土地や家屋から強制的に追い出されている。インドのダリット女性250万人の土地の権利の登記を求める大規模集会が2013年に組織された。それにもかかわらず、土地の所有権と土地の保有は今もって南アジア地域全体のダリット女性の重要な課題である。

概して、ダリット女性は、数世紀に及ぶ執拗な差別と排除により、極貧に見舞われている。小規模事業を始めようと試みたり、これまで支配カーストのものとされてきた仕事に就こうとすると、女性たちはしばしば制裁、ボイコット、財産の破壊あるいは暴力的な仕打ちに遭う。

反撃

ダリット女性たちは、世界で最も醜く効果的な抑圧の装置であるカースト差別とジェンダー差別の交差に対抗するため、団結している。

世界を横断するダリット女性の運動はますます大きくなり、つながりを広げ、意思決定者と国際世論にその声を届けている。女性たちは、国際社会と世界の人びとに、彼女たちの傍に立ち、この醜い差別の存命を許している沈黙を破るために一緒に声をあげるよう求めている。

カースト制度の存在する南アジアの国で、ダリット女性の運動は、何世紀にもわたり彼女たちを抑えつけてきたこの制度に対し、抗議の行進、座り込み、ネットを使った草の根活動、意識高揚のためのイベント、そしてその他さまざまな方法を使って異議申し立てをしている。

欧米のディアスポラのダリット・コミュニティの女性たちも結集し、連帯行動に参加をしている。

抄訳:小森恵

IMADR
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