第26回ヒューマンライツセミナー 開催される

「サプライチェーンにおける人権侵害-その時 企業はどうする」と題した2017年度のヒューマンライツセミナーが9月13日に東京で開催された。セミナーは2部構成からなり、第1部では、コーディネーターの松岡秀紀さん(ヒューライツ大阪)の問題提起に続き、白木朋子さん(NPO法人ACE)が「サプライチェーンの人権課題にどう向き合うか~課題はビジネスと世界を変えるチャンス!」と題した報告を行い、続いて和田征樹さん(㈱エナジェティックグリーン)が「CSR調達-日本の課題」と題した報告を行った。

白木さんは主に世界の児童労働の問題をとりあげながら、企業の人権尊重への取り組みが求められる背景、人権侵害がもたらすインパクトについて述べた。そのうえで、企業は何をなすべきかについて、国連で採択された「ビジネスと人権に関する指導原則」をもとに、サプライチェーンにおけるCSR管理や社内での人権教育・啓発の重要性を唱えた。さらには2016年から始まった持続可能な開発目標(SDGs)の一つに、あらゆる形態の児童労働を終わらせるという目標(8.7)があり、2030年のゴールに向けて企業の積極的な貢献が期待されていると述べた。また、ACEが進めている児童労働のないカカオを目指した「スマイル・ガーナ・プロジェクト」を紹介した。

和田さんは、CSR調達に関する国際的な潮流は2000年のグローバル・コンパクトから始まっていると述べた。その流れのなかでも、とりわけ2015年の英国現代奴隷法と2016年の米国貿易円滑化及び権利行使に関する法律は、サプライチェーンにおける人身取引や児童労働など、企業の雇用実践における問題に直接的に対処していると説明した。そのうえで、日本における外国人労働者の雇用に関して国の内外で起きている批判について、具体的な事例をあげて説明した。さらに、法律まで制定された技能実習制度のもとで起きているさまざまな人権問題に言及し、それに対する政府の対応と企業の対応について論じた。CSR調達はそうした問題を未然に防ぐために重要であるが、企業が国際ルールにそって行動をとるよう促すためには、NGOや消費者団体あるいは市民団体による監視が求められると強調した。

第2部は質疑応答の時間であった。児童労働の詳しい実態について、調達において児童労働などを見極める方法について、英国や米国の法律の実施効果について、技能実習制度のもとでの好事例の有無についてなど、多数の質問が出た。コーディネーターの松岡さんが短い時間のなか多数の質問をとりあげ、二人の報告者が答えた。

休憩をはさんだ3時間のセミナーは489人の方々の熱心な参加と、包括的で的を得たパネリストの報告のおかげで成功のうちに終了した。

(事務局)