カナダは真に多様性を 祝福する社会になれるか

小松 泰介

IMADR事務局次長 ジュネーブ事務所

 

今年8月14日から15日にかけて、国連人種差別撤廃委員会(CERD)によるカナダ審査が行われた。2015年にジャスティン・トルドー首相が就任して以来、「多様性こそがカナダの強み」と謳ってきた政府がどのようにCERD審査に臨むのか注目が集まった。

IMADRはカナダの先住民族団体やマイノリティのNGOに事前に働きかけ、審査に向けたサポートを行った。インターネットを介したブリーフィングも行い、審査の流れ、各委員の関心分野、ロビーイングの方法といった情報を審査参加者に提供した。当日の審査に参加した40人以上の市民社会からの代表は先住民族のリーダーから、アフリカ系やアジア系の当事者までと多様性に富んでいた。この多様性を反映するように審査での議論も多岐にわたったが、ここでは移民・難民に関する議論に絞って紹介したい。

アメリカ合衆国とカナダは難民認定において「安全な第三国」協定という二国間協定を結んでいる。この協定により、アメリカかカナダのうち最初に足を踏み入れた国家で難民認定申請を行わなければならず、アメリカを経由してカナダで申請をしようとした者がいた場合にはカナダから送り返すことができるのである。NGOや国内人権機関の報告によると、トランプ政権下でイスラム嫌悪と外国人排斥が高まっているアメリカで身の危険を感じるため、より多くの人びとがカナダを目指すようになり、なかには陸路でアメリカからカナダへ向かう危険な移動をする人びともいるという。また、刑法を犯していないのにもかかわらず刑事犯と同様の施設に毎年数千人もの移民がカナダで収容されると共に、毎年数百人の移民の子どもたちが大人と一緒に移民収容施設に入れられているという1。しかも、法律によって移民の収容期間が制限されていないために、西アフリカ出身の男性は今年4月まで7年間も収容されていたという。

CERDはこれらの報告を重く受け止め、「安全な第三国」協定はまだ適当だと考えるのか、移民の収容期間に合理的な上限を設けるのか、移民の子どもの収容をやめるのか、国際人権条約のひとつである移住労働者権利条約を批准するのかといった一連の質問をカナダ政府に投げかけた。国別報告者であるスペイン出身のマルガン委員は、「収容されることは移民の子どもにとって決して最善の利益ではない。決してです」と強調した。

しかし、政府代表団の返答は「多様性を祝福するカナダ」のイメージとは相反するものだった。政府代表団は、アメリカをまだ安全な国であると考えているため協定から離脱はしない、また収容期間を決定する現行のシステムは有効であるため上限は必要ない、移民の子どもの収容は最後の手段でしか使われていない、移住労働者権利条約の批准は検討していないという非常に消極的な回答をした。

このような頑な態度は、カナダ政府が人権理事会で見せている多文化主義と多様性のリーダーの顔とは大きく異なり、理想と現実のギャップを象徴するようであった。消極的な政府の姿勢をたしなめるようにジャマイカ出身のシェパード委員は、「カナダには人種差別の負の遺産に立ち向かうという政治的意思が必要です」と指摘した。真に多様性を祝福できる社会を実現するためにカナダ政府が有言実行することを求められた審査となった。

1 国際人権基準では子どもの最善の利益を守るため、移民の子どもの収監は最後の手段であり、代替えの方法がとられるべきとされている。

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