課題と活動

先住民族・ロマ民族

先住民族
アイヌ民族

2007年採択の先住民族に関する国連宣言に続き、2008年6月、日本政府はようやくアイヌ民族を日本の先住民族と認め、内閣官房アイヌ総合政策室を設けました。その後、白老における象徴空間の設置などの政策が進められてきましたが、先住民族の権利を基本とする新たなアイヌ民族に関する法律の制定には至っていません。さらにアイヌ民族に対する差別も根強く残っています。

琉球・沖縄

琉球・沖縄の人びとは、日本政府により先住民族として認識されていないことをこれまで人種差別委員会に訴え、先住民族の権利の支柱である自己決定権の保障を求めきました。特に米軍基地問題において、琉球・沖縄の代表者との協議が行われておらず、米軍基地が琉球・沖縄に集中している事実や、琉球・沖縄の文化や歴史、言語の教育が不十分であること、そして国際的な先住民族の権利全体の保障の欠如などを委員会に訴えてきました。2014年の日本審査で、人種差別撤廃委員は、琉球・沖縄人を先住民族として認めることを検討し、その権利保護のために具体的措置をとるよう勧告しました。

IMADRはアイヌ民族および琉球・沖縄の人びとと協力して、国連人権システムを活用した権利実現の取り組みを行っています。

先住民族に関する資料は資料室をご覧ください。

   

ロマ民族

ヨーロッパ全域に広く居住しているロマは、中世紀後半にインド北西部からヨーロッパへの移動を開始したと考えられています。ロマの人びとは古くから差別と迫害を受け、ナチス支配の時代には「劣等人種」として強制収容所に送られ、ヨーロッパ全土で約50万人が虐殺されました。現在もロマに対するステレオタイプな見方と偏見は根強くあり、居住する国々でロマは教育、雇用、住居などにおいて差別的扱いを受けています。近年では、ネオナチや極右団体による排斥や、ヨーロッパ全土を覆う反移民・難民の流れのなかで抑圧的な状況に置かれています。

ロマ排斥への抗議と要請

東西冷戦崩壊後、EU統合やグローバル化が進む中、ヨーロッパにおけるロマを取り巻く情況は近年さらに悪化しています。IMADRはロマに対する人種主義的で非人道的な政策や動きに対して抗議と要請を行っています。

国際ロマ記念日

   

1971年4月8日から12日にかけて世界各地のロマがロンドンに集まり、第1回「ロマ国際会議」を開催しました。その会議で人びとはそれまで使われてきた「ジプシー」「ツィゴイナー」などの人種差別的な呼称のすべてを否定し、「我々はロマ民族である」と宣言しました。それ以降、毎年この日は世界のさまざまな地で「国際ロマ記念日」として祝われています。

スィンティとロマのホロコースト

2001年8月から国立アウシュヴィッツ博物館でロマの大量殺戮の記録が常設展示されるようになり、その2年後にはそれら展示物を収録した図録が出版されました。これらの実現には、IMADR創設時よりメンバーとして参加をしてきたドイツ・スィンティ・ロマ中央委員会の大きな働きかけがありました。2010年、IMADRは常設展図録の日本語版『ナチス体制下におけるスィンティとロマの大量虐殺』(ロマニ・ローゼ編/金子マーティン訳、反差別国際運動発行)を刊行しました。

ロマの音楽

『ジプシー・スピリット ハリ・シュトイカーの旅』  紹介フィルムはこちらから オーストリアに住むロマのミュージシャンであるハリ・シュトイカーとモシャ・シシッチが、ロマ発祥の地であるインド北部のラジャスターン州を訪れ、文化の源流を探る旅を続ける・・・。インドの音楽家との出会いやコラボレーションもある80分DVDです。IMADRは版元の許可をえて日本語訳付き(金子マーティン訳)のDVDを作成しました。